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悶々と考えるうちにナナメを誘う回数が少なくなって行く。
会いたいと思うのに、また「それじゃ」と帰って行く彼を見送った後の静寂を味わうのは嫌だ。
「おーい、そこのタテヨココンビ~」
「課長……ニコイチにすんの止めてください」
「何だ、タテ。今日は機嫌悪いのか?」
「そうそう、タテは溜まってるんすよ」
「いらん事言うな、ヨコ」
「なぁんだ、プロにでも抜いて貰え。この仕事が終わったらな、ホレ」
デスクの上に山積みにされた原稿に、立脇も横川も言葉を失った。
「何すか? この原稿」
「隣の部署のヤツ、食中りで全滅だとよ。印刷所待たしてるから、校正してくれだってさ」
「「はぁあああああっ!?」」
雑誌の編集をやっている立脇と横川は、課長が持って来た社会部の原稿を手分けして校正する羽目になり、今日は多分自宅に帰れない。
「なぁんで~、金曜日の夜にぃ……元彼とぉ~お仕事ぉ……しかも徹夜て」
「タテ、愚痴言う前に手、動かせ! 死ぬ気でやれ!」
「あいあい、やればいいんでしょ、やれば……」
ペラッと捲った記事は、十五年前の話題をもう一度追うと言うコラムだ。
月刊雑誌のコラムページの連載記事として載せられているそれは、昔の事件の被害者遺族や、ネグレクトにより施設に入った子供、コインロッカーベビーが今どんな生活を送っているかを取材し、赤裸々に書くと言うもので結構人気があると聞いている。
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