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「突然死した母親と、七日間一緒に暮らした少年は今……?」
母と子二人で暮らしていたその家で、母親は心筋梗塞を起こし眠っている間に他界。
当時まだ六歳になったばかりの息子は、状況が良く分かっておらず、近隣住人の異臭がすると言う通報により、警察が来るまで七日間は息絶えた母親と一緒の部屋で衰弱しながらも生活していた。
警察が見つけた際、母親は何かを抱く様に腕を回して横向きになり死後硬直していた為、息子はその腕の中で眠っていたものと想定された。
「その当時六歳だった息子の名前は――――七目明人」
ナナメ……。いやまさか、そんな偶然あるわけない。
「うぉい! タテ! お前、気絶しそうな顔してんじゃねぇよ!」
「あ、ごめっ……」
「はっ? 何で泣いてんの? ちょ、おまっ、どうした!?」
理由もない痛みが、ギュッと絞られて雫になって零れる。
もしこれがナナメが人と一緒に眠れない理由だったとしたら、もしこれがナナメ自身の体験談だったとしたら、どんなに誠意をもって尽くそうとも、どんな言葉をもってしても、一緒に眠ると言う幸せは得られないのかも知れない。
寧ろ、これがナナメの体験談であるならば誰かと一緒に眠るという行為は、ナナメにとって恐怖でしかないだろう。
「お前、大丈夫か? 帰るか?」
「ヨコ……ごめん。ちょっと外の空気吸って来るわ」
遺体を触った事がある。
中学の時、酒飲みでどうしようもない父親がポックリ死んで、痩せて衰弱したその遺体は、冷蔵庫に入れられていたかのように冷たかった。
硬くて、皮膚の感触がつるっとしていて、死化粧したその顔は作り物の様で、人と言うよりはセルロイドの人形を冷蔵庫で冷やしたみたいな感触だった。
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