勇者とドラゴン

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 ドラゴンブレスが俺を吹き飛ばす。  俺は瓦礫の中に埋まりつつ、懐から万能薬を取り出して服用。これは森の賢者に作ってもらったあらゆる傷を瞬時に癒やす霊薬だ。  これがなければ、もう何度負けていたかわからない。  瓦礫を蹴り飛ばして立ち上がりつつ、俺は溜息を吐いた。 「あー……こりゃ決着がつかねえなぁ」  肩に担いだ宝剣を構えつつも、俺はそう言った。少し離れたところでは、ドラゴンが自分に回復魔法をかけて傷を癒やしていた。 『……まさに然り。だが、汝も諦める気はないのであろう?』  ドラゴンは普通に喋る。人間が独自で編み出した言葉ではなかったけど、この世界には魔法語という大抵の知恵ある種族が扱う言語がある。  意思は通じていた。だが、いままではそれに応えようという意思がなかった。  戦いを経て、ようやくドラゴンがこちらの意思に応えた。 「なあ、ドラゴンさんよ。縄張りを移動するつもりはねえか?」  そうしてくれればこちらもあえて戦いたいとは思わない。  それに対するドラゴンの返答はやはり否、だった。 『強き者が縄張りを維持するは自然の理。弱き者に譲る道理はない』 「まあ、それもそうだわな」  そもそも人間は地上に溢れかえっている。ここをドラゴンが譲ってくれたとして、次に移動する場所にも人間はいるだろう。衝突しないなんてことはあり得ない。  ならばやはりここで決着をつけるしかないのだが、俺はこのままでは自分が敗れることを確信していた。  万能薬の残数もそうだが、基本的にこちらには回数制限がある。魔法であれ剣撃であれ、無限に撃ち続けれるというわけではない。  それに対し、ドラゴンは底なしの体力と魔力を有している。それらは戦っている最中でさえ回復し、尽きるということがほぼない。  ドラゴンを倒すには、その果てしない存在を一気に打ち倒すほどの力が必要なのだ。
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