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そして、当日。
滞りなく葬式は進んだ。ぎゃあぎゃあと騒ぐ3歳児を覗いては。
お坊さんが式場を走り回る幼子に気を取られながらも説法をあげおえ、ついに棺を運ぶ瞬間がやってきた。やけに広い室内におじいちゃんの棺を中心として遺族が揃っている。
「それでは、お花を入れてお送りして差し上げましょう。」
そう言いながら式場に溢れかえるほどに届いた花を切り取って入れたトレーをスタッフの人がそっと差し出してくる。
皆、涙を浮かべながら花を手に取りそっと棺の中に入れていく。時々おじいちゃんの顔の近くでボソボソと何かを話す声も聞こえる。
私がじっと立ち尽くしているとあっという間に棺は花で満ちた。
おじいちゃんの青白い顔の周りに不似合いな程にカラフルな花が添えられている。いや、添えるなんてもんじゃない。埋もれてる。人は死ぬとこんな風に花に押し込められるの?
なにこれ、こんなんじゃ逆に残酷じゃない。
こんなに花まみれにされて、これじゃプランターと一緒だよ。
この人は人間だよ。こんな酷いことなんでみんな平気で出来るの?
ぐっと手にもった花が曲がっていく。
わなわなと震える私にも臆せず、おばに抱かれたいとこがおじいちゃんの肩のあたりにポトっと花を落とす。
「じぃじ、お花、きれいだね」
そうだね、なんて言いながらぐすっとおばが鼻を鳴らせた。それを悲しげな表情で見守る親族。
私だけ、どうしても最後まで花を入れる気にはなれなかった。そんな私を見かねて父がそっと私の背中を押した。
私も、おじいちゃんを花で埋めないといけないの?
そう言おうとしたが口は動かない。
仕方なく、足元の方にそっと曲がった花を置いた。息がしやすいように。苦しくないように。
「さっちゃん、おじいちゃん綺麗でしょう?」
和服に身を包んだおばあちゃんが穏やかな口調で私にそう尋ねてきた。
1番最後に花を入れた私を皆がじっと見つめる。
私はおじいちゃんの顔を見つめた。
顔よりも花しか目に入らない。
「…うん。」
私は唇を噛みながらそう答えることしか出来なかった。
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