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「お前、あいつが好きなのか?」
「そんなわけないだろ」
「あいつ、お前がじっと見てくるから気持ち悪いって言ってたぞ」
「見てないよ僕」
「お前、男が好きなんだろ。男のくせに」
僕は君を恨んだ。
君が彼を好きという気持ちを表に出さずにいてくれたら、僕はみんなから変に思われずに済んだんだ。
「君のせいだぞ」
「何が?」
「バレたんだ。みんなに・・・僕が・・・」
「彼を好きなこと?」
「あぁ・・・」
「よかったじゃないか。告白する手間が省けて」
「僕は彼に気持ち悪いと思われてるんだ。もうフラれてるんだよ」
「人を気持ち悪いと思うヤツに告白しなくてよかったね」
前向きなことしか言わない君は、僕がどんな目に遭っているか理解していなかった。
「お前、着替えはトイレでしろよな。男の裸見たら欲情するんだろ。トイレも、これからは女子トイレに入れよな。お前がいたら怖いから」
もう無理だ。
僕は君の背中を押そうと思った。
押して何もかも終わらせようとしたんだ。
だけど、気づいたんだ。
君は何も悪くない、ってことに。
君を嫌う人間は多い。
でも僕まで君を嫌う必要もないし手離す必要もないんだ。
“だって君は罪人じゃないんだから。”
君を嫌って遠ざけるヤツがいても、あからさまに君に不快感を表すヤツがいても、君はヤツらを殺してはいない。
“ヤツらが君を殺そうとしてる。”
そんなヤツらの望み通りに君は殺される筋合いはない。
そして、ヤツらの望み通りに自分(僕)で自分(君)を殺す筋合いもない。
だってヤツらは君(僕)を必要としてないし、君(僕)にもヤツらは必要ないんだから。
僕は今も忘れない。
君の手を離さなかったことを。
おかげで今は、君と僕は一つになった・・・。
(おわり)
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