彼と彼女の邂逅と再会

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おれが話し終わるまで、上田は何も言わなかった。 「松田さんは、赤坂さんの事をどう思ってるんですか?」 上田が言うのを聞いて、おれは肩を竦めた。 「嫌いだよ。おれの人生を壊しかけたからな」 「ふうん。そんな事も有ったんですねえ」 上田は間延びしたように言った。それは赤坂のそれによく似ているもので、おれは背筋が冷えるのを感じた。 「わたしの事も聞いてくれませんか? すこし話したくなっちゃった」 「いや、おれは……」 「聞いてください、嫌とは言いませんよね?」 上田は俺に覆いかぶさるようにして言った。真っ黒などろっとした瞳が、おれを睨みつけていた。腹の底から、嫌な感覚が這い上がってきた。 「何も言わないと言う事は良いって事ですよね。ほら、こっちに来てください」 上田はおれを、上田自身の部屋へと連れ込んだ。 どさり、とおれを投げ入れると、上田は部屋の電気をつけた。 おれは絶句した。 そこはおれの写真が至る所に貼られている、恐ろしく悍ましい部屋だった。どれもこれも盗撮で、家に居る時の写真も、会社で働いている時の写真もあった。どろりとした嫌な感情が渦巻いているようで、それがおれの身体に纏わりついてくるようで、おれは部屋から出ようとした。 しかし、そんなおれを、上田が踏みつけた。 「わたしの話。今も忘れませんよぉ、わたしと付き合ってくれた男の人の事を。わたしはその人が大好きで仕方が無かったけれど、その人はわたしと別れようとしたんです。だからわたしは、彼を繋ぎとめる為に色んなことをしたのだけれど……最終的に捕まっちゃった」 「お前……お前は」  おれが震えながら言うのを、意に介さないようで、上田は流れるように喋りつづけた。 「わたしが捕まっちゃったのが原因で、わたしの家は壊れちゃいました。元々仲が悪い家族だったんですけれどぉ……まあそれで、わたしはお母さんについていって、新しい家庭に入って、名前が変わりました。あとは……そう、整形もしました。名前と顔が変われば、ほら、誰も気づかないでしょう?」 おれの全身から嫌な汗が流れだしてきた。 おれの未来も、視界も、真っ暗になっていった。 「ねえ、松田さん……いや、松田くん。お久しぶりですねぇ」 「赤坂……赤坂京子!」 「もう、逃がしませんからねぇ」 がちゃり、と、とどめをさすように、部屋に鍵がかけられた。
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