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さて、それから後、赤坂はおれと一緒に居る事が多くなった。
話を聞くと学部学科が同じだという。それに加えてサークルも同じだというので、自然とそうなったのだ。
二週間後くらいだったと思うが、赤坂はおれを呼び出して言った。
「付き合おうよぉ、松田くん」
おれは当然有頂天になった。女性に対する免疫はなく、それに人生で初の告白である。おれはその場で頷き、赤坂と付き合う事になった。
一か月ほどは天国だった。これは間違いない。
しかしそれを超え始めると、赤坂の素の姿というか、取り繕わない内面が露呈し始めてきた。
まず、のんびりしたように見えていたが、それは他人の事を全く考えていないからだった。自分の時間を生きている故に、彼女はどこかのんびりと、自由気ままに見えたのだ。
そして他人の事を全く考えていないが故に、非常に付き合いにくい人間だった。非常識な時間に電話をかけたり、何もなしに家を訪ねて来たり、授業用ノートを勝手に強奪して行ったり。
そのうえ、彼女はかなり執着心が強い人間だった。嫉妬心と言い換えても良いだろう。それ故に、地獄絵図が描き出された。
おれの心がぽっきりと折れて別れ話を切り出した後は、陰惨だった。真綿で首を絞めるように、外堀から内堀から、おれの心を再び絡めとらんとし、多種多様な嫌がらせを行ってきた。メールに手紙に喧嘩、その他余り口に出したくも無いものもある。
最終的に、赤坂とおれは完全に破局した。
赤坂がおれを包丁で刺したのだ。幸い命に別状はなかったが、赤坂は警察に連れて行かれ、おれは暫く入院した。
赤坂はその事件の直後に退学して、後は何処に行ったかは分からない。
おれの心に重い傷をつけただけで、消えてしまった。
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