strawberry

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 カランコロン。舌の上を転がる甘味が喉の渇きを訴える。  甘く、苦い。そして、痛い。  ――僕の嫌いな味。 「ねえ、何しているの?」  不意に、かけられた言葉に、僕は重い瞼を持ち上げた。視線を上げると、今年十六となる僕より二、三は年下だろう少女が此方を見下ろしている。  僕は読んでいた本に栞を挟むと、大きく伸びをした。 「昼寝兼読書だけど」  建物に四方を囲まれ、木々が生い茂る空間にベンチが寂しく鎮座している。数日前から、此処が僕の定位置だった。 「何か用?」  僕が尋ねると、少女が困った風に首を傾げた。 「いや、そこは私のお気に入りの場所だから」  まさかこの閑散とした空間に自身以外の利用者がいたとは驚きだ。ベンチの右側に寄り、一人分座れるスペースを作る。 「どうぞ」 少女は柔らかく微笑んだ。 「ありがと」  僕は頷くと、読書を続けようと本のページを捲ろうとし、少女の二つの手に阻まれた。 「お礼、どっちか選んで?」  硬く結ばれた両の掌は何かを隠しているようだ。僕は一瞬、迷う素振りを見せると、右を選んだ。  開かれた掌には、桃色の包装に包まれた小さな球体が鎮座している。 「飴?」 「うん」
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