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初めに、光が降りてきた。
色の洪水、沸き立つ音、そしてクリアになる意識。
私は目覚めて、あなたに出会った。
――あなたの指先で、世界が生まれる――
××12/07/21
目覚めた私が、まず認識したのは身体を駆け巡る温かな存在だった。
満たされた熱を変換し、私はその目的の為に稼働する。
あなたは情熱のままに、私を指先で操り世界を開いた。
『これからよろしくね』
××12/07/22
今日も朝から夜まで働いた。食事などの時以外はずっと私を触っていたようだ。
私には光を感知する機能は備わっていないが、時計を参照するとだいぶ遅い時間になっている。
しばらくして、電源が切られずに操作が途絶えた。どうやらご主人は眠ってしまったようだ。
主が風邪を引くのではと心配になった。
××12/07/30
少しずつ私が使われる時間が短くなっている。
飽きてしまったのだろうか、上達しないことに嫌気がさしてしまったのだろうか。
××12/08/18
閉じ込められた。
光もない。音もない。身体に在ったはずの熱が消えていく。それが無くなった時に、私の意識が消えるのを悟った。
もしかしたら、気が変わってここから出してくれるかもしれない。
もしかしたら、これはエラーか何かで、本当は次の瞬間にはすべてが元通り。あの頃に戻っているのかもしれない。
もしかしたら、
もしかしたら、
『これからよろしくね』
あなたはそう言った。その言葉だけが残っている。熱はもう消えるだろう。
幸せだったときに浸りながら、これだけは、過去も、今も、永遠に忘れないと思いながら、
私は、消えた。
××17/05/03
初めに、光が降りてきた。
色の洪水、沸き立つ音、そしてクリアになる意識。
私は目覚めて、あなたに出会った。
『もう一度よろしくお願いします』
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