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「ルカ、オマエも 何かやるなら 早くやれ」 ... やれ っつっても 効くかどうか わかんねーけど。 ロザリオを赤毛の前に突き出すと 赤毛は急に怯え出す。 おっ。いけるかも。 ここで何か詠唱すべき だよな? あっ、やばい。オレ 主の祈りしか覚えてねーわ。 母さんが いつも祈ってるやつ。 とりあえず、それでいくか... 「えーと... 天におられる わたしたちの父よ み名が聖とされますように み国が来ますように」 赤毛が震え出し、前足の爪が消えた。 除々に体毛が薄くなっていく けど マジで これでいいのかよ? オレ、神父でもなんでもないんだぜ? み言葉の力? 「... みこころが天に行われるとおり 地にも行われますように」 調子に乗って続けてみると、背が伸びて 身体つきが人になっていく。 ガクガク頭が揺れて、男の頭と赤毛の狼のフードが 分離した。効いてんなぁ... 「わたしたちの日ごとの糧を 今日も お与えください わたしたちの罪を おゆるしください わたしたちも人を ゆる」 朱緒が 隣から、男の頭の狼のフードを掴み取ると するりと身体の毛皮ごと取れて オレの手のロザリオの先、史月の腕の中には さえない顔の若い男が残った。 人間に戻ってんじゃん。 まだ途中までしか言ってなかったのによー。
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