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「あっ、あっ... 」
史月が腕を離すと
男は転がった自分の脚のとこまで、両腕と片足で這って行く。赤く太い筋を残しながら。
「ぼく 僕の、あし」
出血のせいか、ひどく震えているが
自分の脚を拾って胸に抱いた。
手には獣に噛まれたような傷がある。
史月じゃないな。ちょっと前の傷って感じだ。
「通報は?」と、泰河を見ると
「警察にはまだ。
沙耶ちゃんには連絡して、救急車は呼んだぜ」と
男に近づいて行く。
「おまえさ、もうあんまり動くなよ。
なんで... 」
泰河が男に言うと、男は自分の脚の肉を噛りながら、泰河を見上げた。
「僕は」
泰河が 一歩後ずさる。
「人のお肉が すきでね... 」
なに はにかんでんだよ
救急車のサイレンが近づいてきた。
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