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「人間だな、こいつは」 前足の下に敷いた赤毛の狼を見て、史月が言った。 「狼の匂いは、毛皮からしたんだ」 「でもさぁ... 」 人間、て 言われたって どう見ても狼じゃん。 毛皮が張り付いただけじゃなく、形も狼なんだぜ。 「泰河、このまま通報して 警察に引き渡すのかよ?」 「いや それはなぁ... 」 史月の足の下で、地面に這いつくばっている そいつの背に、手を置いてみる。 マジで中身は人間だ。 しかもまだ、朱緒を喰う想像してやがる。 「なんとか毛皮を剥がせないの?」 朱緒が言うと、泰河が陀羅尼を唱え出したけど 何も変化は起こらなかった。 「陀羅尼じゃダメだ。どうする?」 オレも祓ってみようと、また そいつに手を置いてみて、はたと気づいた。 中身が、正体の人間なんだよな? 何を祓うんだよ...
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