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男が救急車で運ばれ、沙耶さんに相談したっていう 刑事さんが 一人で来た。 沙耶さんが連絡してくれたらしい。 見た目、50代くらい。 岩っぽい(いか)めしい顔をした人だ。 なんか いかにもって感じの。 史月や朱緒は、連絡先とか聞かれても面倒なので 狼に戻って姿を隠し この場には居ないことにしといてもらう。 「... 助けを求める女性の声を聞いて 近づいてみると、男は狼に変身した、と?」 「そうです」 泰河が、狼の頭付きの毛皮を差し出して 「これを被って」と言うけど 「さっき、救急車に乗った男が? 彼は どう見ても被害者に見えたけどね」 そりゃ 刑事さんは納得しない。 「彼は、どうして あんな大怪我を?」 「他の野犬です」 「そう。ケンカになって。 犯人が話せる状態なら、聞いてみてください」 「野犬? 大きさは? 何色?」 「かなり大きかったですね。大型犬かな?」 「毛が長めで 色は白っぽく見えました。 すいません、僕ら犬に詳しくなくて 犬種までは ちょっと... 」 刑事さんは細く尖った眼で オレらを見た。 「助けを求めてたっていう 女の人は?」 「逃げましたよ。この道を あっちにまっすぐ」 「髪が長い美人でした。20代かな? 赤いコート着てて、黒い皮パンの」 「もう 一頭の 野犬は?」 「救急車が近づくと逃げて行きました」 「それで犯人を、狼から人に戻したんです」 「なるほど ねぇ... 」
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