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 慎治の不安は恐怖に変わっていた。いったい何が起きている。眠気は吹き飛び、狂ったように部屋の中を手探りでかき回した。充電中のスマホを手に取り電源を入れた。  何も見えない。  慎治の恐怖は頂点に達した。震える手で自分の目を触った。まぶたは開いている。何度目を凝らしてもやはり何も見えない。一点の光も感じない漆黒の闇だ。まさか……、こんなことが。どうして? パジャマが汗でびっしょりと濡れているのが分かる。思考が停止し、慎治はその場にへたり込んでいた。  その時、リビングのほうで声が聞こえた。  父と母の声だ。  いつもの朝なら穏やかな会話が聞こえてくるが、明らかに声のトーンが違う。  慎治は怖くなって部屋の外に出た。 「お母さん! お父さん! 真っ暗で何も見えないんだ!」  慎治が叫ぶと、 「おお、慎治か!」  父の声が聞こえた。 「お父さん? 変なんだ! 真っ暗で何も見えないよ。どうなってんの?」 「ああ、今母さんと話していたところだ。部屋の明かりを着けてもだめだ」  善之と朋子も暗闇の中で途方に暮れていたのだ。 「あ、あなた……カーテンを開けても真っ暗よ。街の明かりがまったく見えないなんて……どういうことなの?」  朋子の声が震えていた。 「おかしいよ! 電気を着けても、カーテンを開けても何も見えないなんて……」  慎治は少し冷静さを取り戻すと、ある考えが浮かんでいた。しかし、その考えは慎治の恐怖をさらに増幅させる。わなわなと手が震え、汗が止まらない。何度目を凝らしても、何度まばたきしても何も見えなかった。嘘だ。そんなことがあるはずがない。頼むから何かの間違いであってくれ。慎治は祈るように目を閉じ、そして再び目を開けてみる。やはり何も見えなかった。もはやそうとしか考えられない。
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