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「ほら、佐々木君。ちょっと見てよ」  物理の授業が終わり、慎治がぼーっとしていると、隣の席の手塚成美(てづかなるみ)が突然話しかけてきた。スマホの画面をかざしてなにやら得意げだ。成美はクラスで一番可愛い女子だ。慎治は学年でも一、二を争う可愛さだと考えている。席が隣になって内心うれしかったが、自分ではなかなか話しかけられないでいる。  成美とは違い、自分はイケメンでもなければ、スポーツマンでもないからだ。平均的なルックスで、成績も平均点。全国の高校生の標準値を割り出せば、きっと自分みたいな奴ができあがるはずだ。まぁそれでも、自分ではそこそこイケてるとは思っているのだが……。  ところが、成美はそんな慎治にも気軽に話しかけてくることが多かった。ひょっとして、自分に気があるのでは……などと勘違いしそうになるが、成美は気さくな性格で、誰とでも気軽に話せるのだ。 「何? 何の写真?」  成美が見せてくれたスマホの画面には、何だか分からない機械の一部が映っていた。リング状のゲートのような構造物。下のほうに作業員らしき人も映っているところをみると、かなりの大きさなのが分かる。 「えっ? 何だろ……でかいな。何の機械なんだよ?」 「へっへー。分かんない? 噂のアレよ。『大型ハドロン衝突型加速器』! その観測装置なんだって」  そう言えば、同じような写真をニュースで見たことがある。何でそんな写真を持ってるのかと、慎治が聞くと、成美はさらに得意げに言った。
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