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その晩、学校から家に帰った慎治は、母と二人で食事を済ませ、早々に自分の部屋に引きこもっていた。父の帰りがいつも八時過ぎだからだ。顔を会わせると、「学校はどうだ?」とか「来年は三年生だろう。受験はどうする?」とか、あれこれ聞いてくるのがうざいのだ。父は公務員で堅実な人生を歩んできたこともあって、息子にも良い大学を出て、安定した仕事についてもらいたいと思っているようだ。今のご時世を考えると、それも悪くないと慎治も思っているが、親の思惑通りに自分の人生を決めるのがひどくつまらないと感じていた。
慎治はベッドに寝ころび、ぼんやりと天井に目をさまよわせていた。すると、LINEに着信があった。成美だ。
成美〈次の日曜日に見学会があるけど来れる?〉
慎治は飛び起きて、慌てて返事を打った。
慎治〈大丈夫! 行くよ!〉
成美〈じゃあ、十三時に駅で待ち合わせね。詳しくは学校で〉
慎治〈了解!〉
やったぜ! 慎治は小躍りして喜んだ。これってデートだよな! 『大型ハドロン衝突型加速器』には心から感謝したい。本当はまったく興味はないのだが……。ああ、日曜日が待ち遠しい。いや、その前に、明日になれば学校で成美とこの話で盛り上がれるはずだ。明日のことを考えるだけで、慎治は胸の高鳴りが収まらなくなっていた。
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