二章

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 しばらくの間、そんな事を考えながら街道を地道に歩いていると、気がつけば茜色だった空には陰りが見え始め、遠くには薄っすらと月が顔を覗かせていた。 「クリス」 「ん、なあに?」 「そろそろ野宿にする。日も落ちてきたしな。街道先の向こうに岩場と木がある。あの場所なら、陰にもなって見つかりにくいだろう」  ノートが指し示した先には何があったのであろうか、地表から突き出すように盛り上がった岩の壁と、周りに木が数本存在していた。自然特有の不思議な光景だ。 「うん、わかった。足もクタクタだし早く座ろう。でも、見つかるってどういうこと?」  野外の危険など、室内育ちのお嬢様には関わりのないことだろう。クリスが見当すらつかないのも、無理のない事だった。 「そりゃあ、ならず者やら盗賊にさ。見つかったら最後、殺されるか売り飛ばされるかだ」 「あ、そういうこと。旅に出る前に覚悟はしていたつもりだけど、絶対に襲われたくはないね」 「なに、俺も数年旅を続けているが、出会ったことはあれどまだ死んではいない。日頃の行いを信じようさ」 「出会ったことはあるのね……」  ノートが悠々と笑うと、クリスが複雑な面持ちで呟いた。
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