二章

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 新たな販路拡大のため見知らぬ土地を地図片手に歩いていた商人が、突如盗賊に襲われ、身包みをと商品を奪われ命辛々に逃げてきた、なんて話はいくらでもある。事前に情報を集め、彼らの縄張りには入らないようにし、それでも不運に巡り出会ってしまえば全力で逃げるしかない。この街道であれば滅多なことがない限り問題はないが、どうしても危険は付き纏う。結局は、天にでも祈るしかないのだ。  陰になった岩場は思っていた以上に風よけとしての機能も高く、野宿としては上等な場所だった。街道から離れていて月明りにも照らされず、雨に打たれる心配もない。まさに一等地である。  ノートとクリスは共に肩を並べ、ぺたりと地面に座り込んだ。  丸一日動き続けた足は役目を終えたと言わんばかりに動かなくなり、自身の職務を放棄した。 「うあー。足が痛いー」 「一日歩き続けたからな。そりゃ痛いだろうよ。明日はもっと痛くなるだろうから、覚悟しとけ」 「ええ!? まだ痛くなるの!?」  ノートが意地悪気に笑うと、クリスは引き攣った顔で明日を思い浮かべ、苦渋の表情をみせた。
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