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自分が初めて弟子として村を出た頃も、クリスと同じ反応をしたものだ。農作業で鍛えられていたとはいえ、痛むものは痛むのだ。
「流石に、明日はスピードと歩行距離を落とそうと考えているから、心配しなくともいい。とりあえず、今日は足を揉んで安静にな」
「……ノートは足、痛くないの?」
「痛くはないが、重いな。どちらにせよ、俺も疲れてるってことさ」
ノートがまっすぐに伸ばした足を揉みながら言うと、クリスは安心した表情を浮かべた。
自分だけが疲れているわけではなくてよかった、ということだろう。
「そっか、ノートでも疲れるのね」
「もちろん。俺も旅を始めたころは、毎日足が痛くて困ったものさ。さて、飯にするか」
今晩の献立には硬いパンに大きめのチーズ、そして干し肉が選定された。代り映えしない旅の食事ではあるが、疲れた体はどのような食料であっても旨く感じるのが不思議なところだ。
ノートはいつものように感謝の言葉を告げたのち、カチカチの干し肉を豪快に噛み千切りながら、左手に持ったパンに齧りついた。
クリスもノートに倣い、思い切って干し肉に齧りつく。
「……干し肉硬い……」
「よく噛んで食べろよ? 噛めば噛むほど旨いし、腹も膨れるからな」
クリスは干し肉を口に含んだまま頷き、何度も顎を上下に動かしながら時間をかけて咀嚼した。
「……まあ、確かにおいしいけどね。でさ、さっきノートってば盗賊に出会ったことあるって言ってたけど、どうなったの?」
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