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強大な大地に穿つ穴が、目の前で口を開けている。窪みの縁から覗く穴は太陽に照らされているにもかかわらず、深い穴底の側壁の影により、星のない夜空の如く染められていた。お伽噺に出てくるような巨竜がすっぽりと嵌りそうなほど穴は大きく、足を滑らせ落ちてしまったのなら最後、這い上がることはできないだろう。
二人は落ち込んでしまわないように、穴を覗き見る。見下ろした空間には、点滅する小さな光。暗い空模様の中心点に、求めた星は輝いていた。
「ノート! 真ん中でなにかが光った!」
「ああ、見つけたな。今は太陽のおかげで薄暗いが、夕方にでもなれば闇に沈んじまう。急いで降りるぞ」
噂の星らしきものを見つけたノートは、すぐさま星の穴への降下準備に取り掛かった。
背負っているバックを地面に下ろし、中から長いロープを二本取り出して近くにあったできる限り丈夫そうな鉄柱に括りつける。もう一本のロープも保険として、先ほどとは別の鉄柱に括りつけた。力一杯引き、ロープと鉄柱の結び具合を念入りに確かめる。鉄柱が折れそうな気配はない。準備は出来た。あとは、ロープ命綱として降下するだけだ。
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