砂の肉

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砂の肉

 何も見えない、天井も壁も床さえも無い真っ暗な中に、もう長い間突っ立っている。  有り得ない事ではあるが、それでも、もう四日も続けばいい加減にこれは夢だということくらいは、いくら、このポンコツな脳みそでも理解出来る程度には悩まされていた。 「……またあの夢か」 吐き出した溜息も夢の中だというのに起きている時のものよりもより生々しく、うんざりとした感覚が喉元にざらつきながら溜まってくる。  早く醒めてくれないだろうかと、そろそろ苛立ってきた時だ。頭の中になにか声が広がった。突然の事にうろたえているその間にも声は繰り返され、回数を重ねるごとにぼんやりとしていたそれは明確に輪郭を持ちだし、声は一音一音くっきりと聞こえるまでになった。それなのに肝心のその言葉の意味は、聞けば聞くほど混乱に呑み込まれてしまうものだった。     
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