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開けた窓枠に肘をつきながら煙草に火を点けている端から、だるさがじとりと伝いはじめる。肉の削げた関節が悲鳴をあげるまで、そう時間はかからないだろう。そんな余裕を持てる程度には駄目になっていた。汗ばんだ肌をなぞるには風はぬるすぎていたけれど、後ろの奴は強い風を嫌うのでまだましだと割り切って窓を閉める。
「そういえば、いくつになるんでしたっけ」
「ああ、19です。年取るのって、それだけは簡単なのに、いつまでたってもその数に追い付けなくて嫌になりますよ」
情けなさそうに笑って手にしていた煙草を取り出す。カットソーの生成り色は、余計に肌の青白さを際立たせた。捲れた袖から覗く肘関節の内側。紫色の注射の跡。
「あんたがそれ言ったら、俺どうなるんですか」
こっちも息だけで笑って、ついさっき空にした瓶をつまみあげて片手で遊んだ。
ねえ、ポンプなんか、いいことないですよ。
意味の無い台詞は、流れてくる甘い煙と一緒に呑み込んだ。
駄目になりたかったんじゃない。
今更なことを嫌になるくらいに解りながら、それでも縋ってしまう。
結局と追い込むまでもなくただ逃げたかっただけなのを隠して、馬鹿みたいなくらい大袈裟に息をつきながら背を向ければ、鬱陶しいと言外に伝えられるはずだった。俺はそれを信じていた。
ずっと、そうだと思っていたのに。
これがただの好意だとかそういう単純なものなら、どれだけ楽だったのだろうか。
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