ライナスの左手

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要は、正しくは庇護でさえなくて、損なってしまうとあとがそれはもう死にたくなるくらいにめんどうになってしまうということを、互いにその習性から、あるいは身をもって知っているからというだけに過ぎない。 結んでしまった協定なら、あとはそのまま道連れになるか、切ってしまうしかないんだ。 だから見境もなにかも、言う声もなくして、乾いてしまった粘膜を潤す。 惰性で水をやるように。死を待ちながら水をのむように。 「夏場の水って、飲んでから死にたくなります。不味すぎて」 「それ、カルキ抜けばいいだけでしょ」 俺だってあんたの都合なんかどうでもいい。 「薬買ってきます。ついでに水も」 適当なやつでいいですよね。 どうしようもないから言い訳に、さよなら、と投げた。 ひとりになってから言おうと思っていたのに、珍しく長いこと出て行こうとしなかったから、こっちから動くしかなかった。 さよなら。 口の動きだけでなぞったそれはあまりに現実から遠く離れていて、ドラッグストアに餞別を買いに出るまで、結局最後まで笑うことも出来なかった。 深く俯いて、不安定な痩せた呼吸繰り返す。 色濃く肺に染み付いてしまっている残滓から、目をそらすみたいに。 知らないうちに降り出した細い雨が小窓越しに見えて、それはちりちりと銀糸のようにそこを打っていた。 すべてはきっと単純なもので、だから自分には余計に難しかった。     
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