Room.5 -憤怒のあとの甘いとき-

2/12
6276人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
 * 熱を出した翌日にはすっかり元気になったが、念のため休みを取った。 茉莉はというと、そしらぬ顔で朝からキッチンに立ち、 甲斐甲斐(かいがい)しくお粥を作ってくれた。 どうやら、キスの件は忘れてくれと言わんばかりの態度だ。 「じゃあ、私は帰るんで……」 「待て」 家事を済ませて帰る茉莉を呼び止めると、表情一つ動かさずに振り返った。 ──怒っている。 全身からにじみ出ている禍々(まがまが)しい気配に思わず怖じ気つくも、一つ息を吐くと、 「……ありがとう。本当に、助かった」 「……いえ」 彼女は他人行儀な仕草で小さく頭を下げると、そそくさと部屋を出ていった。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!