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いつものように騒ぎ立て、ギャンギャンと子犬のように噛みついてくることもない。
──やってしまった。
茉莉はそれから俺の部屋を訪れることなく、職場では必要最低限の会話しかしてもらえず、
呼び止めてもそつなく交わされて、幾日も過ぎたころ。
俺は今日こそ茉莉に会えるだろうかと、出勤前に玄関で立ち尽くしていた。
茉莉は、朝7時50分に家を出る。
ちょうど8チャンネルで今日の占いを終える時間だ。
俺の狙った時間を外しているのか、茉莉とは朝ばったり会えることもなくなっていた。
「やはり……謝った方がいいだろうか……いや、今さら言ったところで機嫌を損ねるだけか? わからない、女というものは謎だ……」
あれこれ彼女の反応を危惧しているうちに、重たい感情がどっと背中にのしかかる。
気だるげにドアを開けると同時に、隣の部屋のドアも開いた。
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