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ウノがここにいることよりも、自分がぞんざいに扱われていることの方が気になるらしく、服を掴んで引っ張っている兵士に爪を立ててわめいているトウノ。
ウノは金の腕輪を嵌めた手を上げ指で額を押さえ、そっと瞼を閉じて首を振る。
「トウノ。あなたの時代は終わったのよ。私はあなたを許します。きちんと職務を全うしてくれたらそれでいい。あなたには最後の生贄として山へ行くことを命じます」
「は? 召使いの分際で何をとち狂ったことを!」
「もうあなたの召使いではないのよ、トウノ。私はエレメキの王妃ウノなのです」
トウノは床に転がったまま、その場にいる面々に視線を走らせていく。
見慣れない兵士、エレメキの旗、威厳すら放つウノ、そしてその横に立つ端正な顔立ちの気品あふれる男。
最後に自分の横にいるとらえられたトゥルンガの王。
トウノはなんともおかしな表情をした。
笑っているような半分泣いているような。
「……うそでしょ」
ウノは柔らかく微笑んで、首を振る。
「嘘ではないのよ。あなたがこれまでしてきた悪行の数々が嘘ではないようにね」
ウノはゆっくりと階段を下りていき、無様な姿のトウノの元へと寄って行った。
そして、屈みこむとトウノに再度言い渡す。
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