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吐く息は白かった。
木々も未だ冬の装いのままだったが、足を止めたその梅は一輪の花を咲かせていた。
気の早い梅の花だが、きっとこれから一斉に花開くのであろう、木に身を寄せると甘い香りがほのかに漂ってくる。
梅の木より先を見つめると、石で作られた簡素な祭壇が目に付く。
寒々しいそれを見つめていたまつ毛がゆっくりと揺れて、その頬に一筋の涙が流れていく。
春になったら山の神が浅い眠りから目を覚ます。
麓の小さな国、トゥルンガではそう言い伝えられていた。
春の恵みをもらうのも、夏の雨を降らせるのも、秋の収穫を左右するのも、冬の寒さもこの山の神次第。
だから、トゥルンガでは十五年に一度、山の神に生贄を捧げる。
代々生贄を提供する家系、聖なる娘が住む家を聖家と言って、国王すら平身低頭し、国全体で崇めている。
聖家は神聖な家なので、兵役や税などとは無縁であった。
もちろん金も国から不自由なく支給されるので、生活は王族並みである。
ただ、十五年に一度家から女を生贄に出さなければならないが。
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