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トウノは動くことも億劫な程に肥えた身体を長椅子に横たえていた。 表に出られない窮屈な生活はたった一年で済み、身籠った体で国王へと謁見したのはもう五年も前の話になる。 山の神の子と称した子は、取り寄せた珍しい花達が咲き溢れる庭園の中央にある池で、魚を殺めて遊んでいる。 トウノはそんな我が子を眺めて、微笑まずにはいられない。 神は王より強いのだ。 聖家はこの子によって、更なる力と富を得た。 神の子などと言う大それた嘘であっても、民がそれを信じさえすれば、それはそれで幸せなのだとトウノは思う。 神の子がトゥルンガに居ることが国民に安心感を与えるのだから、これは全ての者にとって酷く優しい嘘なのだとも思っていた。 殺めた魚を振り回しながら駆け寄ってくる我が子に目を細めていた。 「母様、魚あげる」 トウノは息子の手のなかでぐったりとした魚を見下ろすと、側に居た召使いに「山の神がああ言っている。お前が食べよ」と命令する。 「その魚、腹に毒が……」 召使いがそう言って口ごもると、トウノは激昂して言い放つ。 「山の神から与えられた物を食えぬと言うのか!」 召使いは顔色を青くし、震える手でトウノの子から魚を受け取った。 「早く口の中へ」 トウノは促し、召使いはなすすべもなく魚を口に入れた。 直ぐにその者が悶絶し体を痙攣させる姿を見て、トウノは腹を抱えて笑い転げていた。
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