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「みな、嘘にございます。私は聖家にて働いておりましたトウノ付きの召使いです。私の母もまたトウノの母付きの召使いでございました。あの家は、随分前から召使いを生贄に捧げていたのでございます」
「そんな……」
「驚きは無理もありません。聖家から生贄を出さなくても、山の神は怒ることなどなかったのですから。それに、前回の生贄である私は生きておりますので、生贄自体なくても山の神は怒らなかった」
トゥルンガの王は眉根を寄せて、自分の足元にある石畳を見つめる。
「いやでも、それは山の神の子がトゥルンガに居るから……」
ウノは僅かに笑いを漏らしてから言う。
「そのような戯言、本当に信じていらっしゃいます? トウノの周りにきっと山の神の子とそっくりの男が居りましょう。例え、いなくても召使いたちに問いただせばすぐに真相が明らかになるはず」
スコリアがウノが口を閉じたのを機会に、昔の話をしだした。
「私は若い頃より、国境であるあの山が好きで、みんなの目を盗んで遊びに行っていた。そこで、このウノと出会った。容姿の美しさは出会った当初からわかっていたが、話していくうちに心優しい聡明な女性だと知り、心を寄せるようになった。しかし、ある日もう会えないと言うのだ。理由を問えば生贄にならねばならないと」
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