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プロローグ
うそ! 寝過ごした…!?
猛ダッシュで着替え、
おんぼろマンションを飛び出し、
駐輪場から自転車を引っ張り出して職場に向かう。
洗い換えの割烹着を入れた巾着が前カゴで揺れている。
夜道の右手を占めているのは、
新宿御苑裏手の鬱蒼とした木々だ。
油蝉のすさまじい大合唱に、
体の右側から包まれていく。
最近の蝉は時間の感覚がないのか、夜なのに元気だな。
限りある時間に気付いているのかもしれない。
私は?
いつまで彼のそばにいられるのだろう。
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