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二人の関係
雑居ビルの地下への階段を1段抜かしで飛ぶように降り、
裏口のドアにぶつかりそうになりながら厨房に入った。
「すみませんっ、遅くなりました! 」
手を洗おうと蛇口を捻ったら、勢い余って、シンクがけたたましい水音を立てる。
「あー、李薫? 」
この店のオーナー兼バーテンダーの里崎慎さんが、店内のカウンター裏と、この厨房を結ぶ “間仕切り窓” から顔を出した。
「すみません! 」
「いーよ、慌てなくて。
今日、入り、少ないから」
謙遜や誤魔化しなんて、こういうとき、必要ないのに。
私が店内の様子を確認しないのを知ってる里崎さんは、そんなことを言った。
「急ぎますから」
手を拭き、息を整えながら、割烹着を身に付ける。
まずは時間の掛かる煮込み料理から、それとサラダに取り掛かろう。
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