0人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
第1話 トレイン・シークレット
――それは、奇妙な偶然だった。
――これは、奇怪な必然だった。
私たちは、どこへ行くのだろう。
私たちは、どこにも行けないのに。
***
目を覚ますと、ポォー……と警笛の音が聞こえました。もうすぐ、どこかの駅に着くのかもしれません。
さっきまで長いトンネルの中にいたのに、気がついたら森の中にいました。
目をぱちぱちさせながら、私は大きなガラスでできた窓の外の森を見つめます。
こんなに大きくて、立派な列車に乗るのは初めてで、私はとってもどきどきしていました。だって、こんなにふかふかのお席、座ったことがないんです!
思わず眠っちゃうぐらい、ふかふかで、なんだかお姫様になったような気持ちでいっぱいなんです。
この列車のお名前は、『ハイジ号』といって、私が住んでいるエーゲラス国の中でも一番の列車なんです。
お国のえらーい人が決めた人しか乗れないんだとか、予約が三年…いや十年待ちだとか、色々な噂がたくさんあります。それだけ、この列車はすごいのです。
最初のコメントを投稿しよう!