第1話 トレイン・シークレット

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第1話 トレイン・シークレット

 ――それは、奇妙な偶然だった。  ――これは、奇怪な必然だった。  私たちは、どこへ行くのだろう。  私たちは、どこにも行けないのに。 ***  目を覚ますと、ポォー……と警笛の音が聞こえました。もうすぐ、どこかの駅に着くのかもしれません。  さっきまで長いトンネルの中にいたのに、気がついたら森の中にいました。  目をぱちぱちさせながら、私は大きなガラスでできた窓の外の森を見つめます。  こんなに大きくて、立派な列車に乗るのは初めてで、私はとってもどきどきしていました。だって、こんなにふかふかのお席、座ったことがないんです!  思わず眠っちゃうぐらい、ふかふかで、なんだかお姫様になったような気持ちでいっぱいなんです。  この列車のお名前は、『ハイジ号』といって、私が住んでいるエーゲラス国の中でも一番の列車なんです。  お国のえらーい人が決めた人しか乗れないんだとか、予約が三年…いや十年待ちだとか、色々な噂がたくさんあります。それだけ、この列車はすごいのです。     
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