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序
「ハイド、早く脱出して!」
片耳に引っ掛けたイヤホンの中からヒステリックな声が響く。
男はそれに応答はせず、一つに束ねたドレッドヘアーに航空用のヘルメットを被ると、シールドを下げた。
目の前にはテロリストの死骸が数体と、生き残ったラスボス。ラスボスと呼ぶにはお粗末な白髪交じりの中年男が、精一杯の見得を切って叫んだ。
「きさまも道連れだ! 人命を弄ぶ人体実験の申し子め! きさまさえ死ねば、時任の研究など誰一人として」――予想よりも早く部屋の明かりが消え、緊急を知らせる赤いハザードがけたたましいサイレン音と共に点滅する。ラスボスの罵倒は最終警告の声にかき消された。
『アト六十秒デ連結ヲ切リ離シマス』
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