記憶

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 面の下は――予想通りではあるが、鬼ではなかった。  まるで幼女のように垂らした前髪の、三十代であろう美しく整った顔立ち。村の女や咲夜とは雰囲気がまるで違う。きりりと描かれた眉の形、艶やかな唇。その洗練された横顔には見覚えがあった。  だが思い出せない。  何の反応も示さない金太郎に、女は落胆の色を顔に浮かべた。 「憶えていないのね。電能を組み込んだ副作用……それとも時空移動の衝撃で?」 「あんたは俺の質問に答える気はないのか。『ここは何処だ』と聞いているんだよ」  イラついた声で同じ問いを繰り返した。 「ここ? ここは廃寺よ。名前なんて知らないわ。加えると、一七0八年。江戸時代中期の富士山の麓」  人差し指と中指を合わせ、小刀に変形させると、女の首に突き付けた。
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