記憶

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「その父が軍事研究所にあなたを連れ帰って育てたのよ。灰と泥まみれの子供……だからコードネーム灰土(ハイド)。戸籍もない、記憶もない。あなたは私の大事な研究材料であり、そして愛した男」 「黙れ!!」  声を上げたのは、咲夜であった。 「勝手なことを言うな。あんたは一人の人間を、自分の人形にしようとしただけであろう!」 「違うわ! 私は本気で彼を……だからこんな危険な賭けをしてまで、自らここに来たのよ! ねえハイドなら、わかってくれるわよね? あなたが消えた後、私は狂ったようにあなたを探したわ。消えた条件を探り、どれほどの実験を繰り返したか。あれから十年近くの歳月をかけて、ようやくここにたどり着いたのよ。私とこの鬼たちがここに立つことの意味を知りなさい!」 「ふん、それの何が正しいと言うのじゃ!」 「時間を超えたのよ!? まさか、過去に飛んでいたなんてね……どおりでいくら探しても見つからなかったはずだわ。原始人にはわからないでしょうけど、私は時空を超える装置の発明にも成功したのよ!」 「くだらん」  二人の女が真っ向から対立した。
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