時任有希

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時任有希

 二十三世紀。  ここは富士山上空一万メートル点にある私設軍事研究所コロニーの一部。C・E・F・I――サイボーグ工学医療富士研究室。その第五会議室。 「バイオメタルの開発により、より人体そのものに近づいた人造臓器や強化義手ですが、武器を埋め込むにはまだまだ研究が必要です。先ずは拒絶反応」  肩で揃えた黒髪をかき上げ、時任有希(ときとうゆき)が三次元モニターに画像を映した。  狂人、あるいは廃人と化した軍人や犯罪者たちの画像と3D脳波グラフのサンプルが幾つか流される。 「最新のバイオメタル……強化再形状記憶メタルを自在に操るには、人工知能、つまり電脳を脳の一部に組み込む必要があるのですが、ことごとく」 「つまり、研究は足踏み状態というわけかね?」  軍服を着た壮年の男がふんぞり返って、時任有希の発言を遮った。
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