時任有希

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「確かに。しかし、彼においては成功したと思います。まだ目覚めて一週間。ただ今リハビリ中ですが、今のところ順調です。コードネーム『ハイド』。このサイボーグ工学、バイオメタル開発の結晶です」  手元のカード型リモコンを、会議室の中心に向けた。光が照射され、実物大男性の立体映像が浮かび上がる。 「彼がハイドです」  百九十七センチメートルの男性裸体。二十代前半に見える男の立体映像は、真っすぐ前を見据えていた。  精悍なクールガイ。アジア人らしい少し吊ったアーモンドアイに肩まで伸びた黒髪はドレッドヘアー。  しかし彼の両腕の肘から下は日焼けの痕のようにセパレーツである。よく見ると脚も付け根から変色している。手足の先はやや黒ずんだ褐色。胸の下には大きな傷跡。額にも切り傷のような痕が一本。 「これが君の愛人ってわけだ。道理で研究熱心なはずだな」  破廉恥な発言をした中年の医学博士を一瞥し、彼女は説明を続けた。
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