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「既にいくつかの任務で活躍していますから、彼のコードネームをご存知の方もいらっしゃるでしょう。今回で五度目の大改造となります。手足の変色は、バイオメタルとの融合部分です」
立体映像の腕の部分を拡大した。
「接合部の境界にありがちな引き攣りはほぼ認められません。しかもこれは最新型の強化バイオメタル。再記憶形状能力を備えています。もちろん、神経、筋線維に至るまで。更に彼の義眼には以前の暗視機能に加え、熱感知から物質分析の機能を加えました」
先ほどヤジを飛ばした男を見据えて言った。
「私がこの検体に夢中になる意味、お分かりになって?」
不躾な発言への仕返しは、彼女の笑みだった。
その不敵な目に気分を害した医学界の大物博士はあからさまに口角を下げた。
それを見て満足した彼女はさらに続けた。
「彼はほぼ全身に最新の施術を受け、今回それらを制御する電脳の埋め込みにも成功。この体を自在に操れるのです。何の副作用も拒絶反応もなく。同じ施術をした七十三名の男女の検体がことごとく失敗した中で」
映像を消し、会場を見渡した。
「まだ目覚めて一週間です。もう少し時間をかけて彼の研究を進めデータを集めると共に、それに見合った資金協力と軍事的バックアップを要請いたします」
今度は優雅に微笑んで、全ての映像と手元の資料のノート型タブレットを閉じた。
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