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◇
「調子はどう?」
リハビリ室では、ちょうどハイドが精神鑑定を兼ねた試験を終えたところであった。
「上々だぜ。ユキ」
頭部に繋がった幾つかのコードを引きちぎる様に外しながら振り向く。
馴れ馴れしい態度の彼を無視し、彼女は若い助手の隣に立った。
「どうなの?」
「ええ、問題ないかと。精神鑑定にも異常は認められません」
机の上のモニターを観察した。
「脳波には異常はないわね」
「俺さあ、すっげえ難しい数学がスラスラ解けたんだぜ。もしかして、今度の手術で天才に生まれ変わったのか?」
モニターを睨む時任有希の背中から、ハイドが腕を回した。
相変わらず子どものようだ。(精神的な幼さと軽さは変わらないわね)――顔だけを彼に向ける。
「ちょっとお馬鹿さんだったからね、コンピューターを組み込んで賢くしてあげたの。離してくれる?」
彼女の胸をまさぐっていたハイドの手を摘まみ上げた。
(冷たい。温もりが足りないわね。)
バイオメタルの手は、本物の人肌よりも3℃低かった。
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