7人が本棚に入れています
本棚に追加
第6話 ファーストウェルカム
こっちにきてからビックリしっぱなしだけど、一気に全ての謎が解ける予感がする。
この謎は解いてみせる。じっちゃんの名にかけて!
気分は名探偵だ。じっちゃんの名にかけるもなにも、じっちゃんが真実を話して、私は何も推理せずに謎が解決するだけなのだが。
「こっちのスポットを狙うとは渋いなあ。」
虫雄君はまだ私が虫捕りをすると思い込んでいる。まぁ、放っておこう。
気分が高揚しているおかげか、走っているのにそんなに疲れない。青々とした木々がまるで私にエネルギーをくれているようだ。
「ただいまー。」
おじいちゃん、出かけてなければいいけど。
「どの道具持っていったらいいかアドバイスしてやるよ。」
こいつ、なんでナチュラルに家あがってきてるんだ。彼氏すら家にあげたことないのに。私の中ではファーストキスよりも大事なのに。
まさか、私の大事なファーストウェルカムがこいつに奪われてしまうなんて。
「ちょっと、虫雄君。なんで勝手に家にあがってるの。」
「あ、悪ぃ。でも、思い悩んでるお前見てるとほっとけなくてさ。」
ああ、虫雄君は私を気にかけてくれるあまり、学校からついてきてくれたんだ。もしかしたら、私が虫捕りをしないこともちゃんと分かってて付いてきてくれたのかもしれない。虫捕りを口実についてくるという、虫雄君なりの照れ隠しなのだろう。
「どの虫捕るか悩んでるんだろ?相談にのるぜ。」
分からない。本気で言っているのか、それとも照れ隠ししているだけで、“悩みがあるなら相談にのるぜ”的な意味なのか。
「瑠璃、もう帰ってきたのか。」
虫雄君の真意を測りかねていたら、おじいちゃんがきた。これで余計な頭を使わずにすむ。本当に余計な脳細胞を使ってしまった感がはんぱない。
「おじいちゃん、この世界のこと、私の両親のことについて教えて欲しい。あ、虫雄君、悪いんだけど、これからおじいちゃんと大事な話があるから出ていって欲しい。」
「待つのじゃ。虫雄君とやらも残りなさい。まさか、ダンゴムシを相棒に持つ者と出会えるとは……。ふっ、つくづくワシも数奇な運命よの。」
おじいちゃんはとても感傷に浸った表情をして、まるで遠い過去でも見ているように、どこか遠くを見つめている。そんなおじいちゃんを見ながら思った。
私、完全においていかれてるってね。
最初のコメントを投稿しよう!