7人が本棚に入れています
本棚に追加
第7話 旅は道連れ世は情け おじいちゃんに情けはない
おじいちゃんに対面して、私と虫雄君が座って話を聞くことになった。
「この話が終わったら、瑠璃さんと一緒に虫捕りに出かけていいですか?必ずいい虫を捕まえさせます。」
“瑠璃さんを僕にください。必ず幸せにします。”みたいなノリで言うのやめて欲しい。
「こんなやつでよければ、どうぞ連れて行ってやってください。」
あ、おじいちゃん悪ノリしてるな。こっち見てにやけてきやがった。
「おじいちゃん、この世界は一体何なの?私が今までいた世界とは全然違うみたいだけど。」
「一体何かと聞かれると難しい。瑠璃だって、向こうの世界は一体何かと聞かれたら答えられないだろう。両親からはどこまで話を聞いておるのじゃ?」
「本当に何も聞かされてない。ただ、“ダディとマミーはこれから世界を救ってくるぜ!アディダス”て言って急にいなくなっちゃった。」
「豊は、こっちの世界と向こうの世界に関する謎を解くために旅をしていた。たぶん、豊が一番世界の真理を知っている人間じゃろう。」
少し安心した。やばい宗教にハマった、もしくは完全に頭がおかしくなったと思っていたから。でも、父さんが言っていることが本当なら、今、世界は救わないといけないような状況にあるわけで、物騒すぎてやはり安心はできないか。
「世界の行き来は基本的にはタブーとされているのだが、豊は瑠璃ぐらいの歳にはもう向こうの世界に行っている。」
「へぇー。何で?」
「たぶん見たことない虫を捕りたかったのじゃろう。」
こっちの世界の住人の行動原理は全部虫で説明されてしまうのか。そんな夏休みの小学生みたいなノリでタブーを破っていいものなんだ。
「でも、豊は虫ではなくお前の母ちゃんを捕まえてきたのじゃ。“新種の虫を捕まえた”と言って、母ちゃんの頭に虫取り網を被せて家に帰って来た時は流石に笑ってしまったわい。」
それ、流石に笑うとこなんだ。流石に母さん可哀そう。
最初のコメントを投稿しよう!