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なんかさっきから虫雄君がウズウズと落ち着きがない感じになってきている。きっと早く虫捕りがしたくてたまらないのだろう。
「虫雄君、私この話が終わっても虫捕りに行かないから、私を待つ意味はないよ。もう虫捕りに行ってくれば。」
「俺、中学卒業したら旅に出ようと思ってたんだけど、さっきの話を聞いて、ワクワク中枢を刺激されちゃってさ、もういてもたってもいられねぇ。決めたぜ!俺はもう旅にでる!そんで豊さんと一緒に虫を捕りながら世界の真理を探究するんだ!」
虫雄君とは短い付き合いだったな。虫雄君はこのままどこかへ旅立って行き、もうきっと会うことはないだろう。
「うちの瑠璃も一緒に連れて行ってやってくれ。」
「あんまり足でまといになるなよ。」
うるせぇー!付いて行かねーよ。
「瑠璃、両親に会いたいだろう。世界はそのついでに救えばいいのじゃ。」
「会いたくないと言えば嘘になるけど、旅に出たくない。」
そう、この旅はアマゾンを探検するよりもハードルが高い。虫雄君は命知らずそうだし。きっと命がいくつあっても足りない。
「瑠璃、安心しろ。学校の方にはちゃんと電話しとくから。」
そこはもはやどうでもいい。
「嫌だ。絶対に行かない。」
「可愛い子には旅をさせよ。この家に瑠璃の居場所はない。どうじゃ、旅に行かざるを得ないじゃろう。」
おじいちゃんはすごく嬉しそうだ。マジか。完全に鬼の所業だよ。
どうやら腹を括るしかないらしい。
こんなにも憂鬱な旅は初めてだ。
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