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第2話 バグズバグ~バグッたサイズの虫~
「こいつは相棒のダン。」
そう言った虫雄君の手の上には、掌と同じくらいのサイズのダンゴムシが乗っている。そう、この教室にいる虫は異常にでかいのだ。
「お前の相棒も見せてくれよ。」
「生憎私には相棒はいないわ。」
「は?何言ってんだ。お前それでも人間か。」
太い眉毛にキリリとした目の虫雄君が、信じられないものを見る目つきでこっちを見てくる。そんな目で見られると、もしかしておかしいのは私の方なんじゃないかとさえ思えてくる。いや、やっぱりそれはないわ。
「生まれた時にもらわなかったのか。」
私の知っている日本にはそんな風習はありません。という言葉を脊髄反射で言いそうになったけど、なんとか言うのをこらえた。何を言っても変な目でみられるだけだ。というか、お前さっきから目つきやばすぎだろ。死んだはずのおじいちゃんが目の前にいてもそこまでビックリした顔にはなんないぞ、たぶん。
「じゃ、放課後一緒に神主様のとこにいって虫もらってくるか。」
「うーん、ありがとう。」
まぁせっかく親切にしてくれてるし、この村のことも色々聞きたいし、行ってみるか。
そういうわけで、私はこのタンクトップを着た、いかにもわんぱくそうな男に付いて行くことにした。神主様とやらに会いに行くと、“何か”が始まるような気がする。きっと、その“何か”は、私の人生を大きく変えるのだろう。
はぁ、人生変えてくれなんて頼んだ覚えはないんだけどなー。
「あ、すまん。ペン拾ってくれ。」
虫雄君が虫取り網型のペンを使っていることを早くも変だと思わなくなっている自分がいる。人間の適応能力って凄いね。本当はこんな場所に適応なんてしたくないんだけど。
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