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第4話 友達作りって難しい
今日は珍しく目覚ましよりも早く目が覚めた。心地よい目覚め。横を見ると、バカでかいカブトムシがいる。あ、そうかこれは夢だ。
ふぅ、夢だったらいいのに。
この虫は、背後霊のようにずっと私に付きまとってくる。そんなことをして気持ち悪くないのはピカチュウ並みの可愛さがある奴だけだ。お前のような虫が人に付きまとうと、怨霊とか呪いの類にしかなんないよ。朝から暗い気持ちで食事をし、学校へと向かう。
ふぅ。こっちに引っ越してから、東京で暮らした14年間分と同じくらいの回数ため息をついたであろうその時、後ろから可愛い声がした。
「おはようー。瑠璃ちゃん、だっけ。」
雪のように白い肌にふわふわした髪型。少し垂れ目ぎみの大きい目。とても可愛いらしい。頭に大きいイモムシを乗せていることを除けば。
「おはよう。」
「私は、白瀬結菜っていうの。ゆいなって呼んでね。」
「うん。よろしく、ゆいな。」
そうだ、落ち込んでばかりもいられない。きっと気の合う友達ができる。虫耐性さえ付けば、東京の時とそんなに変わらない生活ができるはずだ。
「ところで、瑠璃ちゃんはどこから来たの?」
「東京の千駄ヶ谷から。」
「ごめんね。どこか分かんないやー。」
「千駄ヶ谷はね、国立競技場とかがある場所だよ。」
「えーと、そもそも東京?っていうのがどこか分かんないなー。」
え?そんなバカな。あ、これはたぶん私のギャグセンスを試しているんだ。見た目のわりにめちゃくちゃ笑いに厳しい人とみた。
「日本の夢追い人達が行きつく墓場、それが東京さ。」
「日本って何?」
どうやらお眼鏡にかなわなかったようだ。いや、めちゃくちゃ不思議ちゃんキャラっていう可能性も出てきたぞ。
中々かみ合わない会話をしているうちに学校に着き、友達を作ることの難しさを改めて痛感した。昨日と比べて何が変わったわけでもないのに、急にすごく孤独を感じて苦しくなってきた。こういうのは気の持ちようだって分かってはいるけど。はぁ。
「ねぇ、虫雄君。東京って知ってるよね。」
「いや。何それ?」
こいつの場合私を試しているとかではなく、絶滅危惧種バカなだけなのだろう。
「おい、何だそのあからさまに見下した目は。」
「いや、東京知らない人がまさか日本にいるとは思わなかったから。」
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