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第5話 伝説のハンター
超田舎という言葉では片づけられないほどオカシイとは思っていた。
夢の中で、“これは夢だ”って気づく夢のことを明晰夢というらしい。きっとこれが明晰夢に違いない。夢、見破ったり!しかし、夢にしてはあまりにも長い。
「どうした?何か悩みでもあんのか。」
「悩みっていうか、訳が分からないことが多すぎて混乱してる。」
「まだ転校したばっかだしな。仕方ないから、俺の宝物をやるよ。」
何が仕方ないのかはよく分からないけど、たぶん、私を元気づけようとしてくれてるんだな。どうせ虫かごとかなんだろうけど。
「ほらよ。これで元気だせ。」
虫雄君がそうやって渡してきた物は、意外にも一冊のノートであった。表紙には、
“将来の夢” 団子虫雄
と書かれていた。
センス!プレゼントのセンス!これは世界が違うからとかではなくて、流石に虫雄君がおかしい。そうであって欲しい。
「俺は小さい頃からずっと昆虫ハンターに憧れてるんだ。そして、あの伝説の昆虫ハンター、一条豊さんと一緒に、昆虫狩りに行ってやる。」
虫雄君は目をこれでもかってくらいにキラキラさせながら、胸を張っている。
というか、一条豊って、
「笑いたければ笑えよ。俺が夢を語る度に、無茶だ、無謀だ、現実をみろって、周りの奴らは言う。だけど、俺は絶対になる。なって証明してやる。どんなに不可能と思えることだって、挑戦する心があれば実現するんだってことを。そんでもって、周りの奴らの価値観を全部変えてやる。」
昆虫ハンターって、虫取り網があれば誰でもなれるんじゃないの?という感覚なので、虫雄君の将来の夢は今すぐにでも実現するように思える。
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