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そんな私をよそに大家は廊下を挟んだ反対側のドアを開ける。
「この二つがトイレ」
やっぱり和便器だぁ!!それも汚ねぇー!
更に廊下のどんつきには簡単な雨よけがついた渡り廊下があって、純和風の母屋につながっている。
簡単に言えば、下宿の外に廊下が続いているのだが、
「ここ炊事場」
ふえっ──雨よけの下に確かに流しがある、蛇口が3つついている…って、ここ外ですよぅ…どう考えても外だってば、周りは草ボーボーの庭だし、目隠しに木が並んでいて、上を見れば風流にも満月、うーん綺麗だぁ──って、ここはキャンプ場ですかぁ! ねぇねぇ、もしかしてここキャンプ場ですかぁ? 下宿じゃないんですかぁ?
廊下を挟んだ反対側に洗濯機が置いてあって、そこは雨よけすらない、土の上にオンボロが二つ、これを12人で使っているらしい、って、そこは完全に外じゃないですかぁあぁぁぁぁぁぁ…!!!
と、その先の暗闇からさっきの猫たちがニャーニャー鳴いていた。
大家が言った。
「うちの飼い猫は一匹だったのに、いつのまにか増えちゃって、やぁねぇ」
──それって、ほとんど野良猫じゃね!
「今日は疲れているだろうから、敷金と礼金、契約書は明日でいいよ、ふヘへへ、毛布持ってきてあげるな」
呆然と立ち尽くす私をよそに、小柄な和服のヌシは母屋へと入っていったのだ。
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