彼は不思議な子であった

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「あなたが守ろうと思うなら、きっと大丈夫だと思うわよ」 母親だけあり、かなり力のある言葉である。 それを聞き、なんとなく安心を覚えた私は「そっか」と一言。ペンを持っていない方の手を数回開閉させてから、きゅっと強く握りしめる。 この不思議な縁は、きっと途切れることはないだろう。 そんなことを、考えながら……。 「……誰かとなにか、約束したの?」 穏やかに問うてくる母に、「うん」と頷き振り返る。そうして笑えば、自然と私は口にした。 「自己満足にまみれた、ちょっとした約束をね」 キョトンと目を瞬く母が、少しして笑顔を浮かべる。「それは良いことね」と、小さく頷く彼女は、それからなにを思ったのか、片手を腹の上へ。 ゆっくりと、愛でるように、それを上下に撫で付けた。
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