彼は不思議な子であった

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放課後になると、外は生憎の空模様となっていた。 いつか見た大雨が、頭上より大量に降り頻っている。 「んじゃ、また明日ね! 雨ひどいから気をつけて帰りなよ!」 これから部活がある友人と別れ、一人下駄箱へ。取り出した靴と上履きを履き替え、傘を手にして外に出る。 ──ザアァァァアアァ…… 雨の音がひどかった。 かなりの大粒な雨らしく、傘を叩く音が強烈だ。風が吹いていないことが、唯一の救いなのかもしれない。 洪水になりかけている道を進み、黙々と足を進める。幸いなことに人通りの全くない歩道には、感謝しかなかった。あの時のように、対向者と傘をぶつけ合わなくて済む。なんて素晴らしいことだろうか。 「これであの子と会えたらなぁ……」 なんちゃって、と笑い、無人の墓地の前を通りすぎる。そうしてピタリと足を止めた私は、一つ息を吐き出してから、ゆっくりと背後を振り返った。 ──仮面を着けたその子は、真っ直ぐに前を見据えて、そこにいた。 見間違えるはずもない黒い制服と、新品同様の上履きは、あの頃と変わらず汚れ一つ見当たらない。片手に持たれた筒も、また同様に。 傘も差さず、濡れることすら気にしていない彼の様子に、私は嘆息。黙って彼の隣に立ち、自分と彼の頭上に、傘を掲げた。 所謂相合い傘、というものである。 「……いつまでここに突っ立ってるつもりなの?」 ぶっきらぼうに問いかければ、懐かしの台詞が返される。一つ間を置き「……放っておいてください」と鳴るそれに、私は「嫌です」と言葉を返した。 ザアザア ザアザア  強い強い、雨が降る。 「……あんたが何をどう思ってここにいるのかはわからないけどさ、お節介な私はあんたのことが気になりすぎてしょうがないの。要はあんたにきちんと帰ってもらって、自己満足を得たいわけ。おわかり?」 「……嫌な人ですね」 「あんたも相当よ」 変人の上に口も悪い。 まあそこまで気になる程でもないのだが……。 「……あんた今、有名だよ。行方不明なんだって」 「……そうですか」 「……もういいんじゃない? ずっと未練たらたらってのも、疲れるもんでしょ? そろそろその鬱陶しい仮面外して、休んじゃいなよ。何があったのかはわかんないけど、あんま人驚かせるのはよくないよ」 余計なお世話だ。 そう言いたげに見つめてくる彼に、私は笑う。
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