1人が本棚に入れています
本棚に追加
ひやりと冷たかったので一瞬驚きはしたものの、生身で、生意気な感情を持ち、プログラム通りには動きなどしない「家族」よりも、不快感がはるかに少ない。むしろ快適すぎて、心地よい。
俺が再び、新婚のときと同じように、我が家で「王様」として威張ることができるのだから。
これほど嬉しいことも、楽しいこともない。自作の王冠をかぶりたいぐらいだ。
数日間、俺は夢みたいに快適な日々を味わった。
そう、本当に快適だったんだ。
不満なんかなにひとつない、まるでドラマのような、物語のような日々だった。
あたたかく、俺を持ち上げて、お父さんがいちばん、お前は最高の息子だとほめられる幸せはこの世の天国みたいだった。
アンドロイドの妻が作る料理はどれも物珍しく、栄養バランスも申し分なく、味も俺好みに濃いめに作ってくれた。
息子もあれがいい、これは嫌だと、好き嫌いを言ったりぐずったりせず、素直に従う。
時には防水モードにして、風呂場で背中を流してくれた。
オプションで頼んだ、妻と抱き合う夜の生活も、言い方は悪いが「ツボ」を心得ているプログラムを搭載されているようで、男としてじゅうぶんな満足を得られた。
なにもかも、申し分なかった。
そうだ、申し分なかったはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!