12.去りゆく青春 ~芳side~

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…… 「脳腫瘍…ですか?」 あの頃の俺はまだ若くて、 全てに於いて無知だった。 激しい頭痛、そして嘔吐。 左目がチリチリと痛み、 開けることもままならなくなって ようやく近所の医院へと向かった。 子供の頃からお世話になっていた、 ジイちゃん先生。 俺からすれば医者は神様みたいな存在で、 その人の言うことは 絶対だと信じていたから、 まさか診断結果が間違っているなんて 疑いもしなかった。 雑談をした後、目と喉を診て、 それから聴診器を胸と背中に当てられ、 下された結果は“単なる風邪”。 「芳は若いのに大ゲサだなあ。 あまり騒いでご両親を心配させるなよ」 そうトドメを刺され、 バツの悪い思いで帰宅する。 処方された風邪薬は1週間分。 それを飲んでも一向に治る気配は無く、 むしろ悪化する一方で。 でも、ジイちゃん先生の言葉が 脳裏をかすめたせいで騒げなかった。 眠れぬ夜が続き フラフラして真っ直ぐ歩けなくなり。 これは尋常ではないと母さんに訴えて、 漸く総合病院につれて行って貰う。
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